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大原 高志
no journal, ,
近年、茨城県東海村に建設されたJ-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)は陽子加速器による核破砕反応を利用した大強度パルス中性子実験施設であり、2008年からiBIX、2012年からSENJUという2台の単結晶回折計がそれぞれ稼働を開始した。これらの回折計ではパルス中性子の特徴を利用したtime-of-flight (TOF) Laue法によって広い逆空間を一度にスキャンできるため、J-PARCの大強度中性子と相まって従来に比べて小さい0.5mm角程度の単結晶試料を用いた測定が現実的なビームタイムで可能となった。加えて、SENJUでは極低温(4K)や磁場(7T)環境下での測定が可能であり、高温や高圧、電場といった様々な試料環境の整備も進めている。これにより、これまで結晶サイズの問題から測定を諦めざるを得なかった様々な機能性有機・有機金属結晶の単結晶中性子構造解析を、その機能が発現する環境下で実現できると期待される。
平野 優; 山田 貢*; 栗原 和男; 正山 祥生*; 黒木 良太; 日下 勝弘*; 木村 成伸*; 竹田 一旗*; 三木 邦夫*; 玉田 太郎
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NADH-シトクロム還元酵素(b5R)はフラボタンパク質の1つで、その酸化還元反応に伴いチトクロム等の電子受容体に電子を伝達するが、この反応は小胞体における薬物代謝や脂質合成に深く関与することが知られている。これまでに実施した酸化型および還元型b5RのX線結晶解析の結果から、b5Rの酸化還元サイクルの理解が深まったが、電子授受にかかわる補因子(FAD)や周辺のアミノ酸側鎖の水素原子を含む詳細な構造を決定するには至っていない。そこで、水素原子を含めた詳細な構造情報に基づくb5Rの酸化還元サイクル解明を目指して、b5Rの中性子構造解析を実施した。約2mmの大型結晶を段階的に抗凍結溶液に浸漬することにより低温下での中性子回折実験を実現し、J-PARC/MLFのBL03(iBIX)において1.4分解能の回折データの収集に成功した。引き続き、中性子とX線の両回折データを相補的に用いた構造精密化を行うため、同一結晶を用いてPF BL5AにおいてX線回折実験を行い、0.85分解能の回折データを取得した。本発表では、得られた構造の詳細について紹介する。
平野 優; 玉田 太郎; 栗原 和男; 日下 勝弘*; 三木 邦夫*
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高電位鉄硫黄タンパク質(HiPIP)は、+2/+3価の酸化還元状態を示す4Fe-4Sクラスターを補欠分子として保持し、紅色光合成細菌の光合成電子伝達系ではたらく水溶性電子運搬タンパク質である。本研究では、HiPIPの水素原子を含めた構造情報を得るため、高分解能中性子構造解析を行った。中性子回折実験は、大強度陽子加速器施設J-PARCにおいて行い、タンパク質としては世界最高分解能である1.1分解能の回折データを取得した。また、中性子回折データとX線回折データを同時に利用した精密化を行うため、同一結晶を用いて放射光施設Photon FactoryにおいてX線回折実験を行い、0.66分解能の回折データを取得した。
川崎 卓郎; 金子 耕士; 阿曽 尚文*; 仲村 愛*; 辺土 正人*; 仲間 隆男*; 大貫 惇睦*; 茂吉 武人*; 中尾 朗子*; 花島 隆泰*; et al.
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単結晶中性子回折法による磁気反射の観測は物質の磁気的性質を調べるための最も基礎的かつ強力な手法であるが、Eu, Gd, Sm, Dyなどの希土類元素は中性子の吸収が非常に大きく、これらの元素を含む化合物の中性子回折による磁気構造の研究例は限られている。一方、吸収の影響が小さい短波長中性子を利用可能な白色中性子と、大面積検出器を組み合わせたパルス中性子回折装置を用いることで、吸収の大きな希土類元素を含む物質の磁気構造を効率的に調べられることが期待できる。我々はEuを含み、同一な結晶構造と原子価をもちながらも異なる磁気転移を示す二つの物質、EuGaとEuAlに注目し、J-PARC MLF BL18に設置された単結晶中性子回折装置SENJUを用いて中性子回折測定を実施した。その結果、これらの物質において異なる磁気的秩序状態を示す磁気反射を観測し、EuGaは4Kにおいて伝搬ベクトルq=(0 0 0)の反強磁性的構造であり、EuAlは不整合的な磁気構造となっていることがわかった。